在留資格(配偶者ビザ)の取消し制度とは
在留資格の取消し制度を説明する女性専門家のイラスト
このコンテンツは配偶者ビザの取り消し制度について。
実際にあった事例を元に解説していきます。
在留資格の取り消しとは、一定の事由があった場合に、現在持っているビザを取り消して日本に滞在する法的根拠を失わせる制度です。
対象となる理由は大きく3つあります。
・虚偽申請でビザを取得した。
・在留資格で決められた活動を一定期間しなかった。
・一定期間以上、居住地の届け出を怠った。
これらの状況が出入国在留管理局に発覚すると、ビザが取り消されます。
取り消し後の処分も退去強制(強制送還)から単純出国(ペナルティなし)まで存在します。
(退去強制になるのは、虚偽申請やオーバースティ状態になった場合になります。)
居住地の届け出など在留カードの手続きに関する内容は別コンテンツになります。
ご興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
ここでは日本人と結婚した方が結婚ビザを取り消される事例をご紹介します。
配偶者ビザが取り消されるケース
結婚ビザが取り消されるケースを紹介する専門家のイラスト。
偽装結婚などを除いて、ファミリービザが取り消される事例で多いのが、日本人パートナーと離婚してしまった場合です。
簡単に事例をご紹介します。
相談者のプライバシーの観点から、複数の事例を混ぜ合わせて抽象化しております。
日本人パートナーから離婚を迫られたと言うのがあります。
離婚されてしまえば…
ビザが無効になって、日本に居られなくなる!
ビザが無効になって警察に捕まる!
日本に居たい!
何とかならないの!
相談を受けた時に…
配偶者ビザが取り消されてしまう恐怖で、頭が一杯で冷静さを欠く状態でした。
(実際のところメチャクチャ感情的でした。)
離婚しても即座に配偶者ビザは取り消されません。
離婚して配偶者ビザの活動が出来なくなっても、即座に在留資格が無効にならないことを説明する女性行政書士の画像。
結論を述べますと、離婚しても問答無用でビザが無効になることはありません。
離婚してしまった場合、配偶者ビザが要求する活動が出来なくなります。
確かに離婚は在留資格の取り消しの対象です。
(厳密に言うならば)
日本人の配偶者等の場合、猶予期間が6か月程度あります。
少なくとも半年程度の時間があります。
(在留資格の期間が6か月以下なら期限まで)
この間に就労ビザや定住者ビザなどに変更するか、別の方と再婚するなどすれば、在留資格の取り消し処分は無くなります。
ここで注意点は、猶予期間が6か月あると言っても…
空白期間が長くなれば、在留資格の変更や更新は厳しくなります。
入管の審査官的には、
「半年ギリギリになって更新って… 本当はビザ目的じゃないの?」
とあらぬ疑いを持たれた状態で審査を受けることになります。
また別の日本人と再婚した場合で、配偶者ビザの更新を行うと、
新規の呼び寄せと同レベルの提出書類や審査になります。
入管法22条の4第1項7号(配偶者ビザの取り消し)
入管法22条の4第1項7号(在留資格の取消し)の条文内容を紹介する行政書士のイラスト。
ここからは離婚や死別した場合の在留資格の取り消しの根拠等をご紹介します。
在留資格の取り消しは入管法22条の4第1項に定められております。
この条文は1号から10号まであり、取り消しの要件が10種類あることを示します。
離婚などの場合は、7号が該当します。
条文は以下の様になっております。
入管法22条の4第1項7号
「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留する者(日本人の子及び特別養子を除く。)又は「永住者の配偶者等」の在留資格をもって在留する者(永住者等の子を除く。)が,その配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合(ただし,当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除きます。)。
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/zairyuu/torikeshi.html
引用:出入国在留管理庁HP
入管法22条の4第1項7号の解説
配偶者ビザが予定している活動をしていない場合の取り消し要件を記載しています。
対象者
・日本人の配偶者等(夫・妻のみ)
・永住者の配偶者等(妻・夫のみ)
要件
・夫や妻としての活動をしていない。
・継続して6か月以上。
・正当な理由がある場合を除く。
要は離婚、死別などして配偶者でなくなった。
理由が無いのに同居をしていないなど、婚姻生活の実態が無いケースが該当します。
※正当な理由があれば、取り消しの対象外になります。
入管法22条の4第1項7号で言う正当な理由
入管法22条の4第1項7号で記載される正当な理由を紹介する女性専門家の画像。
平成24年7月に法務省から配偶者ビザの取り消しの除外要件の一例が発表されております。
参考までにご紹介いたします。
1 配偶者からの暴力(いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス))を理由として一時的に避難又は保護を必要としている場合
2 子供の養育等やむを得ない事情のために配偶者と別居して生活しているが生計を一に
している場合
3 本国の親族の傷病等の理由により,再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による
長期間の出国をしている場合
4 離婚調停又は離婚訴訟中の場合
引用元;配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について(法務省出入国在留管理庁)
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/pdf/2407_22417.pdf
上記のURLをクリックするとPDFがダウンロードされます。
この様に法務省は4つの事例を紹介しております。
・配偶者からのDVを逃れるために避難した。
・子供の養育のために、配偶者と別居している(単身赴任)
・本国の親族の看病など
・離婚調停など
あとPDFには記載されておりませんが、夫婦喧嘩で一時的に別居しているケース。
喧嘩はしてるけど、離婚する気はない場合ですね。
他には取り消しではありませんが…
離婚や死別した日本人配偶者との間に実子がいる場合は、定住者(日本人実子定住)ビザが下りる可能性が高いです。
正当な理由は証拠資料が必要になります。
法務省が発表する4つの理由ですが。
これに該当しても、配偶者ビザの取り消しやビザ更新が不許可になった事例もあります。
入管局も取り消すか否かは、個別の審査で決定すると明言しています。
PDFに書かれた内容に該当しても、必ずしも結婚ビザが継続するとは限らないです。
例えばDVが原因で別居していたと主張して、在留資格が取り消された事例があります。
具体的な証拠を提出しなかったのが原因です。
別居や正当な理由があると、文書だけを提出しても審査官は100%信用してもらえないです。
入管へ提出する書類は、客観的な証拠がセットです。
エビデンスが無い事実は、基本的に存在しないと見做される傾向があります。
文書と一緒に証明書などを提出する必要があります。
例えば
・避難している場合は、支援団体からの証明書
・単身赴任している場合は、会社の辞令など
・本国の親族の看病の場合は、病院からの診断書など
こう言った書類を申請や取り消し手続きの意見聴取の段階で提出します。