帰化申請で配偶者が日本人の場合
配偶者ビザがある外国人が永住権が欲しい場合、永住ビザか帰化する必要がある事を説明する女性行政書士のイラスト。
永住と帰化。
国際結婚して日本で暮らす方の多くは永住を考える方が多いです。
永住ビザを取得するか、日本国籍を取得して日本人になるかの選択を検討します。
私の事務所のお客様は
比較的に永住ビザを検討される方が多いです。
自分の国籍が変わることに抵抗があるからでしょうか。
永住ビザも帰化もビザの更新期限を気にしなくてもよい部分は同じです。
違いは色々ありますけども、一番の違いは国籍が変わることでしょう。
永住許可の場合は、日本に一生住むことが可能ですが国籍は外国籍です。
海外旅行や里帰りをする場合は、再入国許可の手続きが必要です。
再入国許可の期間を超えて出国すると永住権は消滅します。
また一定以上の法律違反があると退去強制のリスクも存在ます。
帰化の場合、再入国許可は不要です。
また退去強制を受けることもありません。
その反面、母国に里帰りする場合は査証(VISA)が必要です。
帰化申請とは
帰化申請の概略を紹介する男性行政書士のイラスト。
外国人が日本国籍を取得する手続きのことを帰化申請と呼びます。
手続きをする役所は出入国在留管理庁ではなく法務局です。
要件は日本人と結婚している方は、一般の外国籍の方よりも多少緩和されています。
居住歴5年未満でもOKだったり、20歳を超えてなくても帰化することが可能になっています。
帰化申請のメリット
帰化申請のメリットを紹介する女性行政書士の画像。
外国籍の方が帰化すると、色々なメリットがあります。
例を挙げますと
・日本に永住することが可能になる。
・外国人である場合の生活の不便さが解消される。
・日本国のパスポートが手に入る。
・選挙に行ける。
日本に永住することが出来る。
帰化の許可が下りると、日本の国籍が付与されます。
その瞬間から日本人なので、在留資格の対象から外れます。
在留期限の更新に悩まされることはありません。
在留カードの更新手続きなども不要です。
永住者の場合は在留カードの更新や手続きが必要です。
関連記事:在留カードの届け出義務違反で在留資格更新許可申請が厳しくなります。
永住ビザとの最大の違いは再入国許可の有無。
帰化と永住はどちらも日本に永住することが可能です。
永住ビザは在留資格の期限が無くなるだけで、入管法に違反すれば、ビザが取り消される可能性があります。
取り消される典型的な事例は、再入国許可を取り忘れた、手続きをしないで出国した場合です。
再入国許可なしで、日本を単純出国すると在留資格はリセットされます。
苦労して得た永住ビザがリセットされてしまいます。
再入国許可は永住者にとって、最も恐ろしい結果を生み出すリスクです。
生活の不便さが大幅に減少。
外国人にとって外国である日本での生活は決して便利とは言えません。
日本人なら問題ないことでも、外国人であるだけで困難なことも。
例えば家を借りる場合、外国籍というだけで思うように行かないことです。
家族や友人と海外旅行に行く場合など、自分だけ手続きが違うなど。
公務員試験を受ける際に、国籍条件がある(国家公務員)がある職種は受験不可になるなど。
変わったところでは防衛大学校も受験できません。
日本国のパスポートが手に入る。
帰化した人が一番のメリットに掲げるのが、永住と日本の旅券を持つことが出来ることだと仰っています。
数ある国の中でも日本のパスポートは信頼性がトップクラスです。
2018・2019年のグローバルランキングでも単独1位を取得するなど、信頼性は世界一といっても過言ではありません。
ビザなしで入国できる国の数がダントツの多いのが特徴です。
選挙に行けるようになる。
日本は外国籍の方に、参政権を認めておりません。
参政権とは国会議員や地方議員の選挙権や議員になる権利のことを指します。
判例では地方自治体のに関しては、条例で外国人にも参政権を認めることは不可能ではないと判断していますが。
私が知る限り外国籍の方に参政権を付与する地方公共団体は存在しません。
永住権を持って日本に何十年と生活していても、帰化しない限りは選挙に行くことは出来ないのが現状です。
帰化して日本国民になると、
地方議会や国会への選挙権を持って、選挙に参加できます。
要件を満たすと国会議員や地方議員に立候補できます。
実際に2019年7月にあった参議院議員選挙で、スリランカ出身で帰化した大学教授の方が出馬していました。
帰化のデメリット
帰化のデメリットを説明する行政書士のイラスト。
帰化することには利点が多いですが、デメリットも存在します。
デメリットの例を箇条書きしますと。
・母国の国籍を失う。
・帰化前の氏名が無くなった。
・帰化後に母国へ帰るときに入国ビザが必要になった。
上記の3点が挙げられます。
母国の国籍を失う。
帰化の要件に喪失要件があります。
これは日本国籍を取得すると、母国の国籍を失うというものです。
日本では二重国籍を認めていないので、本国の国籍と日本国籍を同時に持つことが出来ないのです。
ある人が言っていた言を借りると。
「自分の親、兄弟、親せきは中国人、自分だけが日本人、少し寂しい」
「心の中で親に申し訳ない気持ちがある」
「時折、帰化して日本人になったことを後悔する自分がいる」
普段は国籍を考えることはありませんが、ふとした瞬間に自分のルーツが途切れたことを実感する事があります。
今まで自分を構成していたものが無くなってしまう喪失感を覚えると聞きました。
これは理屈だけで片付けることが出来ない問題です。
帰化前の氏名が無くなった。
帰化すると、戸籍に登録する名前を選ぶことが出来ます。
帰化した人は好きな名前を付けることが可能です。
例えば「坂本竜馬」でも「徳川家康」でも「小野小町」にすることも可能です。
法的に認められた新しい名前を得る代わりに、以前の名前は使えなくなります。
生まれてから親に付けてもらった名前が無くなることになります。
自分のアイデンティティの大部分を占める物の喪失は小さくないです。
帰化後に母国へ帰るときに入国ビザが必要。
帰化すると日本のパスポートを使うことになります。
日本の旅券は最強と呼ばれるほどに強いです。
けども万能ではありません。
出産などで長期間の里帰りをする場合、母国の在留資格を取得する必要があります。
母国における法的な身分は外国人になりますので、ビザが必要になります。
配偶者ビザの時なら本国に帰るとき簡単でしたが、帰化後は少々ビザ申請に手間がかかります。
日本人の配偶者が帰化を取るための要件。
外国人配偶者が帰化に必要な条件を女性行政書士が説明する画像。
ここからは日本人と結婚した外国籍の方が帰化する場合に必要な条件をピックアップしていきます。
日本人と縁が深い外国人は帰化の条件が少し緩和されています。
一般の方なら7つ要件がありますが、
配偶者は6つの要件を満たすことで帰化が可能です。
免除されるのは能力要件(年齢条件)です。
条件を箇条書きにすると
・居住要件
・素行条件
・生計条件
・二重国籍防止の条件
・思想・不法団体条件
・日本語能力
上記の6つが日本人配偶者に求められています。
居住要件
帰化申請の居住要件を説明する女性行政書士のイラスト。
・結婚して3年以上、日本で暮らしている。
・3年以上の婚姻歴と1年以上、日本で暮らしている。
このどちらかを満たせば、住所要件は満たされます。
一般の外国人は5年以上の日本に住所を有しているとありますので、かなり緩和されています。
当然ですが、正規の配偶者ビザを持っていることが前提になります。
在留特別許可を取得した方は、許可を取得してから10年くらいが目安です。
素行条件
帰化申請する場合の素行用件を紹介する行政書士の黒板画像。
素行が善良であることが求められます。
要は真面目な人ですか?と言うことです。
素行用件は日本だけでなく多くの国の帰化条件でも普通に書かれています。
どこの国も素行が悪い人を自国民にしたくないのは万国共通です。
素行用件で見られるポイントは大きく二つあります。
・税金や年金をキチンと納めていること。
・警察のお世話になっていないこと。(前科がないこと)
税金や年金をキチンと納めていること。
善良な市民として納税の義務を果たしていることですね。
サラリーマンで社会保険フル装備で天引きされている方であれば問題ありません。
会社員でも国民年金だったり、住民税を自分で支払っている方は要注意です。
未納額があれば、帰化申請の前に全部支払う必要があります。
主婦(夫)の場合で年金が第3号被保険者(配偶者の扶養に入っていて年金納付が免除されている)場合も問題ありません。
主婦(夫)で年収が103万円を超えている方は、未払い額があれば全額支払ってください。
年金を支払った事がない方は、直近1年分を支払うことで、要件を満たせます。
あとは継続して支払う必要があります。
会社経営や役員の方は厚生年金に加入が必須です。
会社が厚生年金に不加入の場合は、厚生年金に加入と過去1年分の国民年金を支払う必要が。
帰化申請と扶養家族について。
源泉徴収票に書かれた扶養家族の間柄や人数も審査の対象です。
・パートナーが103万以上稼いでいるのに扶養家族に入ったまま。
・外国の親族を扶養家族に入れている。
本来は対象にならない人を扶養にして、税金を安くしている場合は危険です。
節税のノウハウといえばノウハウですが、法務局の審査で不利です。
対象外の人を扶養家族にしている場合は、扶養を外して税務署で修正申告が必要です。
修正申告すると、扶養家族で減っていた税金を支払う必要があります。
前科がないこと。
要は警察に捕まった経験がないことです。
多いのが駐車違反やスピード違反で切符を切られたケースです。。
帰化申請では過去5年分の交通違反がチェックされます。
目安は過去5年間に5回前後の軽い違反なら、基本的には問題はありません。
飲酒運転などの重い違反であれば1回でも厳しいです。
交通違反以外の前科。
酔って街中で喧嘩した、スーパーやコンビニで万引きで警察に捕まった話も偶にあります。
これも裁判になっていなければ問題になりにくいです。
場合によっては帰化申請を数年待ってから申請したほうが良い時があります。
生計条件
自分や家族の収入だけで家計を維持できますかという内容です。
帰化申請では公共の負担になる事態を避けたいと考えています。
(永住も普通のビザ申請でも同様ですが…)
ポイントは貯金よりも安定した仕事を収入があることです。
実は貯金よりも収入を法務局は重視します。
目安が会社員なら手取り18万円以上、自営業や会社役員などは毎月18万円以上の収入があることです。
家計が赤字になっていない事が重要です。
見せ金を200万円程度、通帳に入れておく方が居られますが・・・
意味がありませんので、見せ金を銀行口座に入れない事をお勧めします。
むしろ口座にいきなり200万円前後の入金があることを不審に思われます。
二重国籍防止の条件
の帰化申請での二重国籍防止条件と思想要件を女性行政書士が説明する様子の画像。
いわゆる喪失要件です。
日本は二重国籍を認めていません。
帰化した後は、母国の国籍が消滅することが条件に含まれています。
日本国籍を取得と同時に、本国の国籍が消滅する旨の証明書の提出が必要です。
提出は法務局から指示が出てからになります。
国によっては国籍証書を取得すると、国籍が消滅する場合があるからです。
(国籍を消失後に、帰化できないと無国籍になるリスクがあります。)
もしくは国籍証書を取得と同時に、母国のパスポートが使えなくなるパターンもあります。
(昔の中国大使館の対応)
思想・不法団体条件
日本政府を暴力で破壊することを望み、団体を設立、加入する人は駄目です。
危険思想を持っている人を排除するのが目的です。
これも何処の国の帰化でも要求される条項ですね。
1940年のアメリカ合衆国国籍法第305条をベースに作られたものです。
日本語能力
で帰化申請する際に求められる日本語能力を行政書士が紹介する様子のイラスト。
参政権など日本国民の義務と権利を行使するには、ある程度以上の日本語能力が必要になってきます。
目安は小学校三年生、もしくはN3レベルの日本語能力です。
法務局の面接や宣誓書を読むときに審査されます。
担当官との会話で疑問を持たれたら、日本語テストが課される場合が。
普段は流ちょうに話す方でも面接で緊張して、上手く話せなかった人がテストを受ける事になった事例もあります。
帰化申請の流れ。
帰化申請手続きの流れを女性行政書士が紹介するイラスト。
最後に手続きの流れをご紹介します。
・法務局へ相談・・・帰化したい人は法務局で要件と必要書類を教えてもらいます。
・書類の収集と記入・・・リストにある書類を集め、申請書を記入。
・書類の提出・・・申請書類一式を法務局に提出。
揃っていなければ、何度も法務局へ行くことになる場合も
・受理後に面接・・・受理後、2~3週間後に1時間程度の面接があります。
・審査・・・面接と書類で審査が行われます。
・調査・・・自宅や勤務先に法務局の職員が現地調査することがあります。
・合格発表・・・許可が出た場合は官報に名前が載り、法務局から電話があります。
不許可の場合は郵便で通知が送られてきます。
大まかに言うとこの流れになります。
PR:帰化申請は行政書士にお任せください。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。
かなり簡単ではありますが、帰化申請の大まかな部分をご説明いたしました。
帰化申請は一見簡単そうに思えますが、提出書類が膨大になります。
多い時で200枚近い書類を提出することも。
ご自身で手続きをしてみて、書類が揃わない、動機書などの申請書類に何を書けばよいか分からない。
他にも日本での引っ越し歴の生活な日付や元配偶者の戸籍謄本など、普通だと覚えていないことや取得が困難な書類がございます。
確実に帰化したい、書類作成や収集の負担から逃れたい、審査中の不安を何とかしたいとお考えの方は、是非行政書士にご相談ください。
行政書士は帰化申請の専門家です。
確かにご自身でされるよりもコストが掛かりますが、それだけの価値はございます。